第20章

「森、奥さんを先に食事に連れて行ってください。私は少し用事を済ませます」と佐藤悟は指示した。

「かしこまりました、ボス」と森さんは応じた。「奥さん、どうぞこちらへ」

森さんがドアを開ける前に、松本絵里は慌てるようにして車から降り、森さんについて店内へ入った。

この出来事を経験した彼女は、「松本宴」のデザインを鑑賞する気分などまったくなく、うつむいたまま、出されたつまみの十二種盛りに集中して手を伸ばしていた。

しばらくして佐藤悟が入ってきた。松本絵里はこっそり彼を見たが、彼の表情にはもう何の異変も見られず、店の人たちに余裕を持って挨拶をしていた。

佐藤悟は彼女の隣に座った。彼女は好奇...

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