第25章

土曜日。

坂田健之は大型バスを貸し切って、部署の同僚と家族全員がちょうど乗れるようにした。

みんな会社のビル下に集合していた。

松本絵里は二つのスーツケースを用意した。彼女は佐藤悟がわがままな性格だから、福祉施設では居心地が悪いだろうと思い、日用品を全部彼のために一式持ってきたのだ。

早朝、森さんは用事があって、石原透哉が車で二人を会社まで送った。

道中、松本絵里は心配そうに佐藤悟に念を押した。

「これから同僚たちに会うけど、話したくなかったら、笑うだけでいいからね。もし誰かが度を越した冗談を言っても、気にしないで。みんないい人たちだし、普段私にもよくしてくれてるから」

佐藤悟...

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