第10章 救急車を呼ぶ

「羽里様から頂いたお酒、もちろん頂戴します。でも、飲み終わって私がまだ生きていたら、羽里様は必ず約束を守ってください」

葉田知世は相変わらずの態度だったが、その目には数分の険しさが加わっていた。

死さえも恐れない彼女に、この世で本当に怖いものなどあるはずがない。

彼女は立ち上がり、後ろ髪のヘアピンを引き抜いた。黒い滝のような長い髪が流れ落ち、顔の半分ほどを覆った。

そして、自分に一番近いウイスキーのボトルを開けた。

葉田知世は酒には強いほうだが、四十度近いウイスキーなら一本が限界だった。十本なんて、飲めるはずがない。

構わない。この十本を飲み干す前に酔い潰れなければい...

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