第20章 病気

午後も区役所に行くことができなかった。葉田知世が熱を出したからだ。

藤原羽里は彼女を抱いて眠気がすっかり消え、頭の中は甘い思いでいっぱいだったが、やがて腕の中の体がどんどん熱くなっていくのを感じて、ようやく様子がおかしいことに気づいた。

酒を飲んだ後に冷水を浴びたのだから、熱が出るのも不思議ではない。

「ちょっと来てくれ、熱を出している人がいる」

彼は医者の友人である田村健に電話をかけた。

「『人が』熱を出した?」田村健は厳格で専門的、笑わない顔をしているが、骨の髄まで茶目っ気のある人間で、藤原羽里の話を聞くと、思わずからかうような調子で言った。

「その『...

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