第3章 そんなことするな

葉田知世は赤いホルターネックのキャミソールドレスを着て、美しい肩と雪白の腕を露わにし、談笑しながら男性たちのテーブルに座っていた。彼女はずっと勝ち続け、目の前のチップはすでに高く積み上がっていた。

あの日、藤原羽里が残した痕跡はすでに薄れていた。彼女の肌の自然治癒力はなかなかのものだ、と藤原羽里は淡々と思った。

「羽里様!」周りの男たちは恭しく立ち上がって藤原羽里に挨拶したが、葉田知世だけはびくともせず、まるで彼を全く知らないかのようだった。

藤原羽里は空いた席に座ったが、ゲームには参加せず、冷ややかな目で葉田知世が毎回イカサマをしているのに平然としている様子を見ていた。

テーブルの男たちは金持ちか権力者ばかりで、美女に金を取られても怒るどころか、彼女を喜ばせようとする様子だった。彼らは夕方6時から夜10時過ぎまでプレイし、葉田知世の手元のチップは百万円を超えていた。

「羽里様は遊ばないの?」彼女は何気なくチップを数個手に取り、軽く弄びながら、少し離れた藤原羽里に挑発的な視線を送った。

平原遥子によれば、このカジノは藤原羽里の経営で、毎月17日に視察に来るとのことだった。確かに彼女の情報通りだった。

今はちょうど金が必要な時期だった。晨の病気の後期治療にはより多くの費用がかかる。藤原羽里を釣れなくても、少しでも多く稼げればそれでいい。

葉田知世はそう考え、藤原羽里の反応がないのを見て立ち上がり、「もう終わり。こんなに簡単に勝てるなんて、つまらないわ」と言って、ディーラーにチップを換金してもらおうとした。

「お嬢さんのお誘いなら、お断りする理由はないでしょう」藤原羽里がゆっくりと口を開き、その一言で葉田知世はテーブルの前に釘付けになった。

藤原羽里のカードテクニックは一枚上手だった。彼は本気で、葉田知世だけを狙い、彼女が賭けるたびに10倍、20倍と上乗せしていった。葉田知世の山積みのチップが流れるように減っていき、ついには最初の20万円の元手まで失ってしまった。

「ケチね、もう遊ばないわ」葉田知世は不満そうに立ち上がり、「うっかり」バランスを崩して藤原羽里の胸に倒れ込んだ。

二人の間には明確な隔たりがあり、彼女の痕跡は少し濃くなっていた。

「おや!この美女は羽里様を狙ってたんだな!」

「俺たちには容赦なく勝ちまくってたのに、羽里様の前では子羊みたいだぜ」

「羽里様、美女を前にして柳下惠を気取るなよ!」

……葉田知世が藤原羽里を誘惑しようとする意図は明らかで、テーブルの全員がその様子を見て、からかい始めた。

藤原羽里は何も言わず、葉田知世を片手で自分の体から引き離した。彼は彼女のホルターネックドレスの後ろの紐を引っ張り、彼女は咳き込んだ。

認めざるを得ないが、この女は自分の美しさを知っていて、それを常に利用していた。

このような下心と野心が顔に書かれているような女性は、嫌悪感を抱かせる。

「羽里様、隣のホテルに泊まってるの。夜、来てね」葉田知世は必死に藤原羽里の手から逃れ、バッグから自分のルームキーを取り出し、藤原羽里の腰帯に差し込んだ。そしてようやくゆっくりと立ち上がり、カジノを後にした。

藤原羽里は葉田知世の去っていく背中を見つめ、数日前に受け取った資料を思い出した。

「もう一度調べろ。この女が留学前の経歴と、なぜ突然帰国したのかを」彼は田中廉にLINEを送った。

藤原羽里は突然、自分が獲物になったような錯覚を覚えた。この葉田知世という女に狙われているような気がした。

彼女はあまりにも大胆不敵で、彼を手のひらで転がそうとしているようだった。

冗談じゃない。この世で藤原羽里を手玉に取れる者などいない。

藤原羽里は冷たい表情で葉田知世が腰に差し込んだルームキーを抜き取った。この女がどんな芝居を打つつもりなのか、見てやろうじゃないか。

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