第8章 葉田晨の状況が良くない

藤原羽里と葉田家の婚約は、かつて藤原家のお爺様が生きていた頃に葉田家と決めたものだと言われている。

藤原羽里と葉田雲子の交際も、ここ数ヶ月のことに過ぎなかった。

彼は冷たい性格で、感情に対していつも淡白で、心惹かれる女性もいなかった。彼にとって、葉田雲子を娶ろうと、どこかの名家のお嬢様を娶ろうと、本質的には何の違いもなかった。

葉田雲子はピアニストで、身分も体面も整い、温和で礼儀正しく教養もある人物で、秦若お様の地位にふさわしい相手だった。

「どうして病院へ行くんだ?」藤原羽里は思考を切り上げ、何気なく尋ねた。

「最近ピアノの練習が長すぎて、手が少し痛いの。腱鞘炎だと思うわ」葉田雲...

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