第9章 裂傷

「裂傷、傷口3センチ、軽度感染」

翌日、藤原羽里は葉田知世の婦人科診断書を手に取り、不自然に眉をひそめた。

彼は葉田知世の前では、自分の本能を抑えることが難しいようだった。

これまで外向けには冷淡で無感情なイメージを保ち、決して感情を表に出さなかった。

だが葉田知世は彼の悪魔のスイッチを押すかのように、彼を制御不能なほど狂わせる。彼女の前でだけ、本性をさらけ出し、完全に自分を取り戻せるのだ。

前回、クラブの個室のソファに彼女を押し倒したとき、笑顔を浮かべながらも目の奥に悲しみを宿していた姿を思い出し、藤原羽里の心は理由もなく沈んだ。

確かに、彼は彼女に対し...

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