第29章 彼らの間に物語がある

平井琴美はこの様子を見て、むしろ林田浅子を羨ましく思った。

「藤原家はあなたに本当に優しいわね。ボディーガードまで用意してくれるなんて、羨ましいわ」

林田浅子は元気なく首を振った。「羨ましがることなんて何もないわ」

「どうしたのよ、また?」

「琴美ちゃん、もし旦那さんと二人で親密な時間を過ごしているときに、突然女性から電話がかかってきて、彼が出て行ったら、怒るべきかしら?」

平井琴美は考えるまでもなく即答した。「当然怒るわよ。それは挑発よ」

「愛してないからそうなるのよね」藤原裕也は彼女を全く愛していない、好きとさえ言えないから、こんなことになるのだ。

林田浅子はそっとまつげを...

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