第30章 人を知り面を知り心を知らず

林田浅子は高橋紗季という人間は頭がおかしいと思い、彼女と言い争うことを潔しとしなかった。

しかし高橋紗季は林田浅子の腕を掴んで離さず、執拗に食い下がった。「林田浅子、このハゲおっさんが本当にお前のお気に入りなのね。人を殴るなんて重大なことなのに、こんなにあっさり済ませちゃうなんて、すごいじゃない」

「あなたのお母さんのおかげよ。彼女が示談金を受け取って、免責同意書にサインしなかったら、こんな軽い処分で済むわけないでしょ。あの数十万円はタダで貰ったと思ってるの?」見え透いた清純ぶり。

「何のお金?知らないわよ!林田浅子、はっきり言いなさいよ」

林田浅子は高橋紗季の手を振り払い、襟元を整...

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