第40章

「まだ起きてるの?」

「結婚に愛情は必要だと思う?」と彼女は尋ねた。

藤原裕也は一瞬言葉を詰まらせた。

「そうだろうね」

「そうだろう?」林田浅子は体を彼の方へ向け、男を見つめた。

「つまり、愛のない結婚でも、あなたは受け入れられるってこと?」

「何が聞きたいんだ?」彼は鋭い視線で彼女を見据えた。

「別に何も」口まで出かかった言葉を、彼女は飲み込んだ。

「相談があるの」

「何だ?」

「母が残した家に、数日泊まりたいんだけど、いい?」林田浅子はさらりと言ったが、その声色には言い表せない感情が幾重にも重なっているようだった。

「俺も一緒に行くか?」

林田浅子は首を振った。...

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