第59章

あきらめよう。

恋愛なんて、いらない。

藤原裕也は雪子に丁寧に別れを告げると、身をかがめて車に乗り込んだ。

眉間を摘まみながら、彼はポケットを探った。携帯はどこだ?

「佐藤さん、私の携帯見なかった?」

運転手は充電スペースを探してみた。

「社長、ありませんね。もしかして会社に置き忘れましたか」

「会社に戻ろう」

「かしこまりました」

車は藤原裕也を藤原株式会社まで送り届けた。携帯は分厚い黄花梨の机の上に放置されていた。

彼はそれを手に取り、一瞥した。

数件の不在着信に加え、林田浅子からのLINEメッセージが一つあった。

タップして開くと、一行のメッセージが目に飛び込ん...

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