第18章

市役所。

坂井晴美は身分証明書と婚姻届を持って藤原恭介を待っていた。

三年前の婚姻届を出しに行った日のことを思い出す。下川では大雨が降っていた。

藤原恭介は最初、忙しいから遅れると言った。

その後、雨が強すぎるから、やめて後日にしようと言ってきた。

彼女は一人で市役所の入口に立ち、雨が降ったり止んだりするのを眺め、市役所が閉まる直前になってようやく藤原恭介が現れた。

坂井晴美は笑い合いながら出入りするカップルたちを見て、感慨深く思った。

本当に愛している人なら、たとえ大雨でも会うのを遅らせたりしない。ましてや婚姻届を出すという重要な日なら。

彼は自分を愛して...

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