第23章

坂井晴美はそれを聞いて、藤原恭介の暗い顔を見ると、急に面白くなった。

彼女は口元を少し上げると、突然土田正志の方へ歩み寄り、自然に彼の腕に手を回した。

坂井晴美は顔を上げ、土田正志を見上げて微笑んだ。その杏色の瞳は細かな光を湛え、小悪魔のように人を惹きつけた。彼女は尋ねた。

「土田さん、水原お嬢様がわたしたちお似合いだって言ってくれたんですから、少し付き合ってみませんか?」

土田正志は目を細め、藤原恭介と水原美佳を見た。

藤原恭介の顔はすでに真っ黒になっていた。

土田正志は坂井晴美の意図を読み取ったようだった。

なら、芝居に付き合おう。

土田正志は手を伸ばし...

ログインして続きを読む