第30章

「落ち着いて、焦らないで」土田正志は坂井晴美に声をかけた。

坂井晴美は頷き、土田正志に微笑みかけた。

その一瞬の微笑みに、藤原恭介の胸の奥がかすかに揺れた。

だが、すぐに藤原恭介は平静を取り戻した。

いつからだろう、彼がこうも坂井晴美を気にかけるようになったのは……

今この瞬間、彼の関心は水原美佳に向けられるべきではないのか?

水原美佳は素早くボールを打ち込み、一つ一つの動作が無駄なく的確だった。見れば分かる、彼女は長年ゴルフをやってきた人間だ。

藤原恭介は無理やり自分の意識を水原美佳に向け、彼女に拍手を送った。

「美佳ちゃん、すごいね」

水原美佳は藤原...

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