第52章 村田お母さんの困り事

私には断る理由がなかった。ちゃんとした服に着替えてから、タクシーを拾い、位置情報に従って山崎家の別荘へと向かった。

玄関に入るとすぐ、人々に囲まれている村田お母さんの姿が目に入った。

一目合っただけで、村田お母さんの表情が硬くなった。

「あなた、どうしてここに?」

夕食会は昼間ほど賑やかではなく、山崎家の別荘で行われていて、親族だけが招かれていた。

今ここにいる人たちは、みな山崎家の親類縁者ばかりだった。

私は無理に礼儀正しい笑顔を作った。

「隆に呼ばれたんです」

村田お母さんの表情は実に見事だった。彼女は素早く私の側に来ると、私の腕を引っ張って二階へ向かった。

その力の強...

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