第55章 本当に失望した

私は口を開けかけたが、村田隆の真っ赤な瞳と目が合い、言おうとした言葉を飲み込んだ。

「母さん、先に帰って。ここは俺が処理する」

村田隆の声はかすれていた。よく見れば、彼の目の下にも赤い血走りが浮かんでいる。

杉本健一が近づいてきて、私に軽く頭を下げると、村田お母さんを支えて連れ出そうとした。

「隆、絶対にこの詐欺師に情けをかけちゃダメよ!」

村田のお母さんは隆の袖を引っ張りながら、私を憎々しげに睨みつけた。

「母さん、先に行って。自分のことは自分で処理するから」

村田隆の忍耐は限界に近づいていた。母親もそれを悟ったのか、これ以上言い続けても良い結果にならないと察したようで、しぶ...

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