第56章 私たちは手を組む

村田隆はやはり私の家に人を遣わして、名義変更の契約書を届けさせた。

来たのは他でもない、杉本健一だった。

私はとても良い顔ができず、ドアをそのまま閉めようとした。

「安野さん、僕のことを少し誤解されているかもしれませんが、話し合うべきだと思います」

杉本健一の顔には、相変わらずの温厚さが漂っていた。

「私たちに話すことなんて何もないわ、帰って」

再びドアを閉めようとしたが、杉本健一に手で遮られ、無理やり中に入り込まれた。

私は眉をきつく寄せた。

「杉本健一、これ以上帰らないなら、警察を呼ぶわよ!」

しかし杉本健一は眼鏡を外すと、これまでの穏やかさとは打って変わり、どこか不真...

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