第58章 最後の一回

「安野恭子!離せ!」

村田隆は冷たい声で言ったが、私には分かる。彼の体は拒絶していないことが。

私は彼の前に回り込み、顔を両手で包み込むようにして見つめた。

しばらくして、突然彼に唇を重ねた。

「安野恭子、離れろ。こんなことは不適切だ!」

村田隆は私を押しのけようとしたが、どうしても踏ん切りがつかないようだった。

私のキスは彼の顔や首筋に乱れるように落ち、声はかすれ気味になっていた。

「村田隆、最後にもう一度だけ…しよう」

村田隆の瞳孔が一瞬で縮んだ。

「ダメだ、安野恭子。嫌われたくないなら」

私は村田隆に拒否する隙を与えず、力を込めて彼をベッドへと引きずり込んだ。

「...

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