第22章 少し酸っぱい

時田陽介の顔色はやや青白かったが、目には輝くような笑みが浮かんでいた。

彼は佐藤夏子を見つめ、少しかすれた声で言った。「ありがとう!」

佐藤夏子は彼に微笑み返した。「できる範囲のことをしただけよ。気にしないで」

時田陽介に対して、彼女はずっといい印象を持っていた。

彼が佐藤悠子に愛想良くしない数少ない男性の一人であることだけでなく、彼の誠実で朗らかな性格も理由だった。

今回の救助について、実は彼女も時田陽介が自分と一緒に飛び込むとは思っていなかった。

あの時、貯水池の水門はまだ開いておらず、二人の子供たちも危険な状態ではなかった。

それでも彼が飛び込んで泳いでいったということは...

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