第5章 バラエティ初放送
アパートに戻った後、佐藤夏子は自分のツイッターにログインし、ついでにパスワードも変更した。
以前彼女のツイッターは佐藤和真が管理していたが、相手はあまり熱心ではなかった。
一ヶ月、又は二ヶ月に一度しか投稿せず、ほとんど活動していなかった。
コメント欄を開くと、佐藤夏子は中がほとんど彼女への罵倒で埋め尽くされていることに驚かなかった。
そして彼女を罵る人々は、ほとんどが木村凌と佐藤葉月のファンだった。
以前、彼女と木村凌が二人で食事に行ったことがあった。
ストーカーに盗撮され暴露され、彼らが幼馴染だということが掘り起こされた。
木村凌のファンは彼女に対し、彼らの旦那の人気にぶら下がって話題を作っていると罵った。
さらに彼女たちの旦那に余計な気持ちを持つなとか、分不相応だなどと言われた。
これはまだ二人の恋愛関係が公表されていない状態だった。もし公表されていたら、彼女はもっとひどく叩かれていただろう。
佐藤和真も彼女のために広報担当を手配しなかった。彼女が提案しても否定された。
その時、彼女は佐藤家のエンターテインメント会社を離れる考えを持ち始めていた。
そして、これらのファンや言論に対して、木村凌はすべて無視し、何も説明しなかった。
さらに木村凌はこれらを理由に、彼女は芸能界に向いていないと言い、引退させようとした。
当時、彼女は彼と大喧嘩をした。
佐藤夏子は今思い返すと滑稽だと思う。これが彼女の幼馴染の彼氏だった。
彼女が叩かれ中傷されているとき、ずっと傍観していた。
説明も擁護もしない、これではまるで彼女が幼馴染に便乗して話題作りをしているという疑惑を裏付けるようなものだった。
佐藤葉月については、一度彼に頼まれてダンスの練習に付き合った時、ストーカーに盗撮され暴露された。
すると彼のファンが彼女を罵り、厚かましくも佐藤葉月を誘惑し、取り入ろうとしていると言った。
彼女がプレイガールになりたがっていて、一方では木村凌に気があるくせに、佐藤葉月も誘惑し、浮気性だなどと言われた。
彼女はこれでトレンドに上がるほど叩かれた。
彼女は佐藤葉月に説明を求めたが、彼は潔白な者は自ずと清らかだ、説明は隠し事をしているようなものだと言った。
彼らの関係は広く知らせる必要はないと言った。
佐藤和真も同様に広報の助けを求めなかった。
二人の兄弟が何もしない中、彼女も自分から説明しに行くことはできなかった。そうすれば間違いなく事態は悪化し、もっとひどく叩かれただろう。
ところが間もなく、佐藤和真が佐藤悠子をデパートに連れて買い物に行き、荷物を持ちカードで支払うなどのサービスを受けている様子が、誰かに盗撮されネットに投稿された。
そのため佐藤悠子も同様に佐藤葉月のファンからトレンドに上がるほど叩かれた。
しかし今回、佐藤葉月はいわゆる「潔白な者は説明不要」という態度はとらなかった。
ツイッターで佐藤悠子を罵る人々に強く反論しただけでなく、彼らの兄妹関係を公表した。
佐藤和真も直ちにチームに広報させた。
二人の関係を洗浄しただけでなく、佐藤葉月と佐藤悠子の兄妹愛を強調するような話題も作った。
前世で佐藤夏子もこの件で、佐藤葉月と佐藤和真に対してますます冷淡になり距離を置くようになった。
そしてこれを機に佐藤家と佐藤家の会社を離れることを決意した。
ただ、それが実現する前に誘拐され殺されてしまった。
すぐに、番組チームが公式発表のツイッターを投稿した。
佐藤夏子は以前佐藤和真が投稿したツイッターをすべて削除し、バラエティ公式発表ツイッターをリツイートした。
案の定、ツイッターの下には二人の謎の男性ゲストへの継続的な好奇心と推測、そして佐藤葉月が特別ゲストになることへの驚きの他に、彼女に対する罵詈雑言が溢れていた。
「えっ?女性ゲストの中に佐藤夏子がいるの?番組チーム、冗談でしょ?」
「このゲスト陣の中で、彼女だけが今一番格下で人気もないのに、番組チームは何考えてるんだろう、なんで彼女を呼んだの」
「十中八九、何かコネを使って枠を手に入れたんでしょ、例えば裏にスポンサーがいるとか」
「そうそう、彼女が一番得意なのは男をたぶらかすことだもんね」
「うわ、まさか私の葉月を追いかけてきたんじゃないでしょうね?」
佐藤葉月のファンは皆、彼のことを葉月と呼んでいた。
「きっと番組で葉月にまとわりついて、葉月の人気や注目を利用するつもりよ」
「そうだとしたら、本当に気持ち悪いわ。葉月は妹のために特別にこのバラエティに参加したのに、彼女には葉月に近づかないでほしい」
「他のゲストには文句ないけど、佐藤夏子には本当に興味がわかない」
「彼女は顔立ちがいいよね、一年前彼女が演じた女二号に驚かされたよ、なんで有名にならなかったんだろう」
「ここ一年以上ほとんど活動してないじゃん、心は全部主演俳優を誘惑することに使ってたんでしょ、そりゃ人気出ないよ」
「彼女の顔が天然かどうか誰が知ってるの?それとも以前の写真や動画はフィルターが強すぎたのか、素顔も見たことないし」
「葉月、頑張って!絶対に彼女に染まらないで、あなたは天使の面倒だけ見てればいいんだから」
その後、佐藤夏子への罵倒が続く一方で、佐藤悠子を賞賛するコメントも増えた。
美しく優しい妖精ちゃん、優しく可愛い天使などと。
佐藤夏子は一目見ただけで分かった。これは佐藤和真がマーケティングチームに佐藤悠子のイメージを確立させ、話題を作らせているのだと。
一般視聴者がこれらのコメントを見れば、佐藤悠子に興味を持たずにはいられないだろう。これはどんな妖精ちゃん、どんな天使なのだろうかと。
番組が始まれば自然と注目するだろう。
もちろん、彼女に対しても同じことが言えるが、彼女の場合はネガティブな方向だった。
佐藤夏子は彼女を罵り中傷するコメントを気にしなかった。現在の彼女の知名度や地位では、反応すれば逆にもっとひどく叩かれ、一般視聴者からの好感度を下げるだけだ。
視聴者に彼女の印象を変えさせ好きになってもらうには、バラエティでの実力を見せるしかない。人気と実力が地位と発言力を決めるのだから。
ツイッターを閉じると、佐藤夏子は他のゲストの詳細情報を調べ始めた。
その後の時間、佐藤夏子は自分の体調を整えながら、バラエティ出演の準備をした。
その間、木村凌が他人の携帯から彼女に連絡してきた。
しかし佐藤夏子は彼の声を聞いた瞬間、すぐに電話を切った。
佐藤葉月も彼女に連絡してきたが、彼女は同様に切って着信拒否するという対応をした。
一週間後、バラエティ『ゼロから始める』が初放送された。
これは初のライブ配信アウトドアリアリティショーだった。
番組チームは、美顔フィルターを一切使用せず、台本も一切ないと断言し、リアルさを追求していると主張した。
ゲストたちは別々の場所から自分で録画都市に向かい、そこから番組チームが手配した車で目的地へ向かう。
目的地は辺鄙な山村で、市内から町を経て村に着くまでに5時間以上の車移動が必要だった。
佐藤夏子が最初に村に到着した。
彼女の車が到着するとすぐに、ライブ配信が正式に始まった。
このバラエティは事前宣伝の力が大きく、監督も有名で、さらに二人の謎のゲストという話題性と神兄妹コンビという要素があった。
そのため放送開始とともにライブルームの視聴者数は急増し、すぐに100万を超えた。
佐藤夏子は整った顔立ちで、肌は陶器のように白く、スタイルも良く高身長だった。
今日は桜色のスポーツウェアを着て、薄化粧で、ポニーテールにしており、青春の輝きと活力に満ちた印象を与えていた。
ライブ配信の画面がズームインすると、視聴者たちは佐藤夏子がカメラに向かって明るく微笑むのを見た。
「最初の人がなんで嫌いな佐藤夏子なの?見たくない」
「これって人気順なんじゃない?彼女が一番格下だから、すごいゲストは最後に出てくるんでしょ」
「彼女見たくない、葉月と妹が見たい」
「彼女みたいな人は参加すべきじゃない」
「ああああ、美顔フィルターなしでこの顔面偏差値って夏ちゃんマジ最強じゃん、カメラ映えしすぎ」
「夏ちゃんが私の心に美しく刻まれた」
佐藤夏子のファンのほとんどは「夏ファン」と呼ばれ、番組の公式発表を見た後、ライブ配信も視聴していた。
今、彼らは画面の前で歓声を上げ、画面を舐めるように見つめていた。
「他はどうか分からないけど、この顔立ちは確かにすごい」
「このお姉さんの顔の良さが分かった、番組で変なことさえしなければ、これからファンになるよ」
佐藤葉月と佐藤悠子のファン以外の、他のゲストのファンや一般視聴者も、佐藤夏子の美貌に衝撃を受けた。
第一印象は、このお姉さんは本当に美しいということだった。
続いて2台目、3台目、4台目の車が次々と到着した。
車からは順に人気歌手の藤原薫、二線女優の高橋美咲、実力派俳優の鈴木朝陽が降りてきた。
藤原薫は今日、カジュアルスポーツブランドの服装だった。
高橋美咲は優雅なロングドレス姿だった。
鈴木朝陽は清潔で穏やかな雰囲気を持ち、車から降りると笑顔で三人の女性ゲストに挨拶した。
佐藤夏子は笑顔で丁寧に挨拶を返し、同時に他の二人の女性ゲストにも笑顔で挨拶した。
藤原薫は佐藤夏子に笑顔を返し、さらに積極的に彼女と少し会話した。
高橋美咲も笑顔で挨拶したが、佐藤夏子に対しては冷淡で距離を置き、少し優越感を漂わせていた。
すぐに、また一台の車がやってきた。

























































