第58章 彼女が失踪した

「山崎さんに他に用事がないなら、そろそろお帰りください。俺は休みたいので」

彼はわざと山崎景年に向かって手を振り、ドアを乱暴に閉めた。

山崎景年は追い出されたが、どうすることもできなかった。

このまま諦めるわけにはいかない。黒川綾が彼を待っているかもしれないのだ。

突然、彼の心に一つの考えが浮かんだ。その場を立ち去るふりをしたが、実際にはそれほど遠くへは行かなかった。

夜も更けて静まり返った頃、山崎景年は再び水原家の近くに戻ってきた。

周囲の警備員が油断している隙に、すぐ横の塀を乗り越え、慎重に裏手へと回り込んだ。

案の定、三階の一室にはまだ薄暗い明かりが灯っていた。

勇気を...

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