第59章 子供がいなくなった

水原拓真は黒川綾に対して何とか芽生えた僅かな愛情も、完全に消え去ってしまった。

「お前がいなくなって。山崎景年がそんなに必死になって探し回って、俺に手を出すほど焦っていたのも納得だ。お前たち、とっくに裏で繋がっていたんだな」

今の彼は怒りに満ちていて、どこにもぶつける場所がなかった。

「毎回、流産防止を口実にして、実は病院で山崎景年と密会するのが目的だったんだろう」

彼は黒川綾を引きずるように外へ連れ出し、一切の情けを見せなかった。

「でたらめを言わないで、そんなことない」

黒川綾の体は壁にぶつかり、あちこち青や紫の痣ができていたが、水原拓真はそれを完全に無視した。

「水原拓真...

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