第60章 いくつかの不安

水原拓真は終始頭を上げることなく、胸中に千々の思いを巡らせていた。

後悔、彼は本当に後悔するのだろうか?

この子を堕ろしても、実は痛快な気持ちにはならなかった。

むしろ黒川綾があれほど絶望し苦しむ姿を見て、一瞬の不安が過ぎった。

いや、これはすべて見せかけだ。

彼は絶対に後悔しない、黒川綾の今の状況はすべて自業自得なのだから。

水原拓真はもう躊躇わず、背を向けて立ち去った。

水原雪乃は恐る恐るドアを開け、おずおずと中へ入っていった。

黒川綾は彼女を見るなり、感情が一気に高ぶった。

「何しに来たの?出て行って、全部出て行ってよ!」

水原雪乃は慌てて謝罪し、黒川綾の感情を落ち...

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