第27章

加藤龍平が路地を出ると、遠くに赤木玉里の姿が見えた。彼女は団地の入り口の斜め向かいに立ち、きょろきょろと辺りを見回している。明らかに自分を待っているようだが、加藤大輔の姿はどこにも見えなかった。

彼の胸の内は複雑な感情で一杯になった。

どうやら加藤大輔は少しも変わっていない。臆病で、しかも自分勝手だ。

しかし赤木玉里は……

赤木玉里は道の両側を絶えず見回していたが、加藤龍平が正面から歩いてくるとは思わず、彼が目の前に来るまで気づかなかった。

「龍平」赤木玉里は思わず彼の手を取り、心配そうに尋ねた。「大丈夫だった?」

こんなふうに、家族のように自分を心配してくれる人は、もう何年もい...

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