第26章

定金!

商売だ。金を持たずに来られたら断る理由になる。

篠崎アエミは人ごみをかき分け、榎田神也の前に立った。「定金はいくらになりますか?」

「はい、どうぞ」

榎田神也はさっと小切手を一枚手渡した。

一瞥すると。

ゼロがたくさん!

なんて気前がいいんだ。

篠崎アエミは歯を食いしばった。「ありがとうございます!ご安心を、お二人に満足いただけるウェディングドレスを必ず設計いたします!」

低い声に、怒りが滲んでいた。

榎田神也は眉をひそめ、さっきの「どうしたの?」という声を思い出した。

彼は目に遊び心を宿して言った。「何かアイデアがあれば、先に聞かせてもらえないか」

言うわ...

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