第33章

人が突然倒れた。

周囲の人々は慌てふためいた。

傍らにいた木村絵美が、動こうとした矢先。

彼女よりも素早く動いた者がいた。榎田神也が飛ぶように駆け寄り、倒れた人をしっかりと支え止めた。

「芽衣ちゃん!」

二人は抱き合った。

目に痛いほどだった。

林田涼子が呟いた。

「そんなに弱いの?」

倒れるなんて言ったらすぐ倒れるなんて。

篠崎アエミは彼女に向かって首を振った。

「もう言わないで!」

彼女は足早に近づき、声を潜めて言った。

「こういう時は人中を押してみたら?」

「それは……」

榎田神也は一瞬躊躇った後、場所を譲った。

篠崎アエミはしゃがみ込み、注意深く観察す...

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