第35章

「無憂さん？大丈夫？」

鈴木芽衣の声が響いた。

篠崎アエミは全身を震わせながら、サングラス越しに榎田神也を睨みつけた。

榎田神也は腰を伸ばし、最後の動作を完了すると、ゆっくりと服を整え、冷たく言った。

「今、ちょっとぶつかっただけだ。戻ろう、すぐに終わるから」

「わかった！急いでね！」

鈴木芽衣は目を伏せ、その瞳に宿る憎しみを隠しながら立ち去った。

外の足音が遠ざかるのを聞きながら。

篠崎アエミはぐったりと地面に崩れ落ちた。

榎田神也は彼女を一瞥し、「出ろ。疑われるぞ」と言った。

「あなた……」

こんな厚かましい人間を見たことがなかった。

篠崎アエミが服もまだ整えてい...