第8章

「彼女が朝に追突した人ですよ」

林田涼子は目が覚めたように頷いた。

話す間もなく、女性がしつこく続けた。「さっさとお金を返してよ」

こんな理不尽な人は、林田涼子も篠崎アエミも初めて見た。

このお金は警察もちゃんと確認したもので、篠崎アエミがどうして返す必要があるだろうか。

それに、最初に追突したのは彼女のほうで、このお金を受け取っても何の問題もない。

「山本さん、このお金はもともと私のものです。このままごねるようでしたら、警察を呼びますよ」

篠崎アエミも無駄口を叩くつもりはなかった。こんな女性と話しても、道理が通じるわけがない。

どうせ話が通じないなら、一気に決着をつけたほう...

ログインして続きを読む