第35章

松本隆一は手に持っていた湯川優のカルテを見つめながら、顔を上げずに優しく言った。「佳木さんが会社で用事があって来られないと言っていた。君が私の病院にいると知って、私に様子を見に来るように頼んだんだ」

湯川優は少し恥ずかしそうにしながら、心の中で親友を二度も罵った。

もし彼女が来られないなら、少なくとも一言知らせてほしかった。事後報告されると少し困る。

松本隆一は顔を上げ、湯川優の困惑を見て取った。

彼は優しく微笑んで言った。「恥ずかしがることはないよ。病院では私たちはただの医者と患者で、性別の違いなんてないんだから」

松本隆一が自分の心の中を見透かしたように話すのを聞いて、湯川優は...

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