第11章

考えているうちに、いつの間にか眠りについてしまった。

悪夢を見るだろうと思っていたのに、意外にもぐっすり眠れた。

目を覚ますと、枕元には現金の束と一枚の名刺が置いてあった。

それにメモ用紙も一枚。「何かあれば連絡を」

そこに書かれた文字は力強く流麗で、玖珂智の性格そのままだった。

実は両親の葬儀の時も、彼は同じような名刺をくれていた。

あの時、藤原純がその名刺を見て、嫉妬したように皮肉を言ったっけ。その後、その名刺は行方不明になってしまった。

階段を降りると、執事がすぐに迎えに来てくれた。

「小林お嬢さん、若旦那は会社へ行かれました。着替えの服はお部屋のクローゼットに入れてお...

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