第20章

本当に彼だったんだ、私の思い違いではなかった。

手を上げて、挨拶すべきか迷った。

しかし玖珂智はすでに背を向け、後ろ姿だけを残していった。

まあいいか!

こうなったら、挨拶するかどうか悩む必要もない。

彼の毒舌に苦しむこともなくて済む。

気持ちを整理して、ゆっくりと揺られながら家に帰った。

家に着いた頃には、もう夕暮れが迫っていた。

街は車で溢れ、街灯が灯り始めていた。

途中、藤原純から電話があり、いつ帰るのかと尋ねられた。

私は冷たく言い返した。「あんたに何の関係があるの?遅くなりたければ遅くなるし、暗くなっても帰らないかもしれないわ」

藤原純が川崎志乃と喧嘩でもした...

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