第12章 五十足が犯した

藤原修一は藤原博之に「余計なことを言うな」という目配せをした。そのとき、水原寧々がトイレから出てきて、個室に人が増えていることに気づき、一瞬戸惑いながら藤原修一を見た。

水原の母が助け船を出した。「藤原さんの遠い親戚で、名前は...」

水原の母も名前を知らなかったので、藤原博之が言葉を継いだ。「藤原博之です」

水原寧々を見て、藤原博之はさらに困惑した。兄は目の前のこの年配の女性とデートしているのではなく、この若い女性と?

藤原という姓を聞いて、水原寧々は特に疑問を持たず、席に着いた。

「藤原さん、両親を早くに亡くして、兄弟姉妹もいなくて、本当に苦労してきた子なのよ。T市で一人で頑張...

ログインして続きを読む