第29章 そんなに必死に妻を追わなくてもいいのに

藤原修一は水原寧々が去った方向を見つめたが、夜市は人で溢れかえっていて、視界に入るのは後頭部ばかりで、彼女の姿はもう見えなくなっていた。

水原寧々との付き合いは長くはないが、藤原修一は彼女の素朴さを感じ取ることができていた。

藤原修一は同意するように言った。「小崎さんのおっしゃる通りです。良き妻は三代栄える、と」

小崎さんは笑いながら言った。「大事にしなよ。あんたたち、まさに才色兼備の絶妙なカップルだ。間違いないさ。そういえば、結婚したって水原さんから聞いてなかったよ。ほら、これはほんの気持ちだ、受け取って」

小崎さんは赤い封筒を取り出した。中身はそれほど多くなく、5000円ほどだっ...

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