第15章

佐藤芳子はただ秋山棠花に見せつけたかったのだ。今の秋山家は自分が仕切っているということを。

もはや秋山棠花の居場所などないと。

人前で家のことを持ち出して彼女を辱めた佐藤芳子の偽善的な顔を引き裂いてやりたい衝動に駆られた。

だが彼女はそれを抑えた。

佐藤芳子が待っているのは彼女が手を出すことだ。そうすれば逆に被害者ぶって事態を混乱させるつもりなのだろう。

秋山棠花はスーツケースを持ちながら一歩一歩階段を降り、冷ややかな表情で佐藤芳子の前に立った。

「さすがに年を取ると耳も利かなくなるし頭も働かなくなるのね。言ったでしょう、あの家は私の母のものよ。数日中に私が直接取り戻すわ。それに...

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