第38章

いくつかの事は吟味する価値があるのか、秋山棠花はまったく気にしていなかった。

彼女が本当に信じていないのは、あの偽善的な母娘だった。

ライチェスターがどれほどの格式を持つホテルで、その背後にどれほど複雑な勢力があるのか考えてみればわかるはず。誰かが悪巧みをしようとしても、ホテルの入口で公然と誘拐などできるはずがない。

これがホテルにわざといちゃもんをつけることでなければ何だというのか?

しかも途中で警察に出くわして助けられたなんて、まるで皆が頭を使わないと思っているようだ……

だが、真に受けた人がいた。

藤原光弘の表情が冷たくなり、ついに秋山棠花の手を離した。

「秋山柔子の件は...

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