第163章

昼食の間、水原優子と平井詩織はテーブルを挟んで向かい合って座り、二人とも黙々と食事をするばかりで、一言も交わさなかった。

塙町蓮が席を立って行ってしまうまで、平井詩織はようやく重荷から解放されたかのように、深いため息をついた。

すぐに、彼女は小鳥のようにぺちゃくちゃとおしゃべりを始めた。

「水原さん、さっきはマジでびっくりしたよ。塙町さんって、フルネームは塙町蓮っていうの。うちの病院で一番若い副院長だから、みんな塙町さんって呼んでるんだよ」

「まさかあっちの意味に取るなんて思わなかったよ」

「……」

今になってようやく、彼女はその名前の本当の意味を理解した。

確かに、彼女の誤解...

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