第168章

その言葉を聞いて、水原優子はふっと笑みを浮かべた。

こんな風に聞かれるのは、もう随分と久しぶりだった。

彼を愛しているのか?

愛している。

もちろん愛している。

十年間ずっと愛し続けてきた。

たとえ離婚したとしても、この日々の中で、毎晩毎晩、彼女は彼のことを想い、彼のことを思い続け、彼を愛し続けてきた。

あれほど深く、あれほど痛いほどに、どうして愛さずにいられるだろうか。

風が水原優子の細く長い髪を揺らす。彼女は微笑みながら、軽く髪をかき上げ、向山延司の方を見つめ、先ほどの質問に真剣に答えた。

「愛してるわ、もちろん愛してる」

少し俯き、水原優子は柔らかな声で続けた。「十...

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