第196章

しかし、もう遅かった。

太田沙耶香の叫び声を聞いて、佐藤久志が振り向こうとした瞬間、その長い棒が既に力任せに彼の背中に打ち下ろされていた。

一撃。

佐藤久志はよろめき、ほとんど地面に半跪きになりそうになった。

だが、それでも耐えている。

彼は一身の気骨を持ち、凛然とこの天地の間に立ち、少しの屈服も見せなかった。

しかし、その一瞬の躊躇が相手に機会を与えてしまった。

すぐに、二本目の棒が…

佐藤久志はまだ耐えていた。唇を噛みしめ、必死に背筋を伸ばし、痛みに耐え続けていた。眉間には深い溝ができていたが、一言の哀願も口にしなかった。

「久志……」車椅子に座った太田沙耶香が、心を引...

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