第57章

「赤ちゃん、いい子でいてね」

「赤ちゃん、安心して。ママは強いから、何も悪いことが起きないようにするからね」

水原優子の両手は、ずっとお腹を守るように添えられていた。

その間、彼女は迷っていた。佐藤久志に電話をかけるべきかどうか。

かけるか?

彼女は何度も自問した。

一瞬、実際に彼の電話番号を見つけて発信したこともあった。

しかし相手が出ようとした瞬間、彼女は慌てて切ってしまった。

病院に着くと、水原優子はすぐに受付を済ませた。

待合室で待っている間、彼女はすでにひどく具合が悪くなっていた。頭がぼんやりして重く、足元は軽い。まるで今にも倒れそうな錯覚さえ覚えた。

待合室は...

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