第59章

向山は頷いた。「確かに目立ちますね。警察署に戻って着替えてからにします。ちょうど署の近くに喫茶店があるので、そこで待ち合わせるのも便利です」

「あ、はい」

水原優子はすぐに頭を下げて車に乗り込んだ。

目的地に着くと、向山は安岡に水原優子の待機場所を手配させ、自分は着替えに行った。

その間、水原優子は佐藤久志から電話を受けた。

出たくなかった。

しかし、相手は何度も続けてかけてきた。

結局、水原優子は深く息を吸い込み、通話ボタンを押すしかなかった。

だが、彼女は自分の強さを過信していた。

電話が繋がり、佐藤久志の声が聞こえた。「水原優子」

その名前を聞いただけで、彼女の胸に...

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