第93章

彼女のバッグには二本のミネラルウォーターが入っていた。一本はまだ開封されておらず、もう一本は彼女が軽く一口だけ飲んだものだった。

ほんの少ししか飲んでいなかったので、大きな違いは感じられず、取り出した時も特に気にしていなかった。

まさかこんな小さな不注意が、本当に取り違えの原因になるとは。

空のペットボトルを見つめて何か言いかけている様子の水原優子に、向山延司は尋ねた。「どうしたの？」

「あの……」

言ってしまったら、あまりにも恥ずかしすぎる。

結局、水原優子は話題を変えた。「なんでもないわ、ただあなたは大丈夫かなって」

「私は平気だよ。こんなの私にとっては何でもない。それより...