第59章

佐藤七海は何も言わなかった。ただ胸がつかえるように苦しかった。

どうすれば彼に自分の言い出せない好意に気づいてもらえるのだろう?少しも感じてくれないのか?彼女は十分暗示したつもりだったのに、なぜ……

この数日間、彼女はずっと病院で西村遠に付き添っていた。田中恵子と西村剛志には連絡していない。あの二人に知らせたら余計に面倒になるだけだ。ずっと病院で西村遠に付き添っていたが、彼はいつも落ち着かず、何度も葉山静香に電話をかけては通じない。彼が何度も諦めずに電話をかける姿を見て、佐藤七海の胸はさらに苦しくなった。

……

そして同じ時刻、こちらの特別病室では。

高橋和也がソファに寄りかかり、...

ログインして続きを読む