第60章

高橋和也は向こうで彼に全く気づいていない女性を見つめ、目に一筋の得意げな表情を浮かべた。彼女を手に入れる方法など山ほどあるのに、彼はあえてこの女が自分から近づいてくるのを待っているのだ。

そして、彼はその冷たく落ち着いた足取りで病院のロビーを後にした。新城豪は無力に軽くため息をつくと、彼もその場を離れ、携帯を取り出して別の電話をかけた。

……

ピピッ——ピピッ——

こちら側では西村遠の携帯がすぐにまた鳴り始めた。西村遠は電話を取り、葉山静香からだと思ったが、予想外にも会社の財務部長からの電話だった。彼は人差し指を唇に当て、佐藤七海に静かにするよう合図した。

「もしもし、西村です」

...

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