第1章

直属上司との一夜、その後の体験とは?

江崎玲子はホテルのベッドで目を覚まし、隣に横たわる男性を見た途端、昨夜の激しい情事の記憶が脳裏に蘇り、完全に頭が真っ白になった。

彼女が寝たのは、K市で絶大な権力を持つ古江家の当主、古江直樹。しかも彼女の直属上司だった。

噂によれば、古江直樹のベッドに上り、古江家のお嫁さんになろうとした女性たちは、最後にはK市から姿を消し、良い結末を迎えた者は一人もいないという。

江崎玲子はまだ若い。彼女はもっと長く生きたかった。

逃げるしかない。

古江直樹がまだ目覚めないうちに、江崎玲子は足音を忍ばせてベッドから降り、床に散らばった服を拾って着た。

服はすべて引き裂かれていて、昨夜の戦いがいかに激しかったかを物語っていた。

昨夜古江直樹と寝たのは、完全な偶然だった。会社の部署が階下のレストランで宴会を開き、彼女は酔いつぶれてしまったのだ。

彼女はそれが艶やかな夢だと思っていた。昨夜の詳細や、どうやってこの部屋に来たのかも覚えていない。ただぼんやりと、自分が上に乗っていたような記憶があった。

それで彼女は、自分から古江直樹に迫ったのだと確信した。

江崎玲子は慌てて立ち去ったため、バッグを取る際に一枚の履歴書が床に落ちたことに気づかなかった。

青山レジデンス。

江崎玲子が賃貸アパートに戻ったのは、ちょうど朝の七時だった。

ルームメイトであり親友の林澤明美が部屋から出てきた。「玲子、どうして外から帰ってきたの?昨夜は帰ってこなかった?」

江崎玲子と林澤明美は二人とも孤児で、孤児院で一緒に育ち、一緒に学校に通い、社会に出て共に頑張ってきた。互いに頼り合い、実の姉妹のような関係だった。

江崎玲子は少し気まずそうに、とっさに嘘をついた。「あのね...昨夜会社の宴会が景山ホテルの階下のレストランであって、ちょっと遠くて、飲みすぎちゃって、同僚の家に一晩泊めてもらったの」

「そう」林澤明美は深く考えず、表情は無表情のまま言った。「そういえば、印刷してって頼んだ履歴書、できた?会社の採用締切は今日までで、仕事が見つからないと、もう食べていけなくなっちゃう」

それを聞いて、江崎玲子はようやく思い出し、急いでバッグの中を探ったが、履歴書が消えていた。どこに落としたのか思い出せなかった。

江崎玲子は申し訳なさそうに言った。「明美、ごめんね、履歴書をなくしちゃった」

林澤明美は笑顔で、柔らかい性格のまま答えた。「大丈夫よ、自分で印刷しに行くから。どうせわたし、採用されるかわからないし。あなたは名門大学卒だけど、わたしは専門学校卒だから、そう簡単に仕事は見つからないわ。どうしようもなかったら工場で働くか、デパートで服売るのもいいかも。あなたが成功したら、わたしのこと忘れないでね」

江崎玲子と比べると、林澤明美は容姿も学歴も大きく劣っていて、それが彼女の心の中に自己卑下と敏感さ、そして言葉の端々に嫉妬心を生み出していた。

「明美、そんな風に自分を卑下しないで」江崎玲子は励ました。「約束したでしょう、苦楽を共にするって。わたしのものはあなたのもの。わたしにお金ができたら、あなたを養うわ」

林澤明美は突然真剣な表情で尋ねた。「玲子、あなたのものはわたしのものって言うけど、もしいつか、わたしたちが同じ男性を好きになったら、わたしに譲ってくれる?」

江崎玲子は笑った。「わたしの心の中で、あなたが一番よ。男なんていくらでもいるわ。いなくなれば新しく見つければいい。でも親友はあなただけ」

林澤明美は微笑んだ。「冗談よ。早く服を着替えて出勤しなさい。お酒の匂いがするわ。これからは少し控えてね」

「わかった」江崎玲子は部屋に入ったが、会社に行くことを考えると不安になった。

彼女はまだインターンに過ぎず、古江直樹のような大物は多忙を極め、彼に会う確率はとても低いとはいえ、心配は消えなかった。

これが後ろめたい気持ちというものだろう。

もし古江直樹に彼女が彼と寝たことを知られたら、きっと虚栄心の強い女だと思われ、K市で生きていけないよう彼女を追い詰め、最悪の場合、この世から消されてしまうかもしれない。

噂によれば、それらの「姿を消した」女性たちは、古江直樹によって密かに処理されたのだという。

古江直樹はピラミッドの頂点に立つ男性であり、彼女は下層の小人物に過ぎない。交わるはずのない平行線だった。

江崎玲子は頭を振り、昨夜のことを一つの夢だと思うことにした。古江直樹が彼女のことを覚えていないよう祈るばかりだった。

昨夜の部屋はあんなに暗かったのだから、彼は彼女の顔を覚えていないはずだ...そう願った。

ホテル。

古江直樹は目を覚まし、上半身裸のままベッドに座っていた。乱れた髪が禁欲的な雰囲気を醸し出していた。

彫刻のように精巧な顔立ちは冷たさを湛え、引き締まった胸板からは男性ホルモンが溢れ出ていた。

二日酔いで頭が割れるように痛い中、古江直樹は昨夜の出来事を思い出そうとしていた。

もしシーツの上のあの赤い痕跡がなければ、昨夜のことを夢だと思い、女の幽霊に襲われたのだと思っていただろう。

古江直樹の視線がカーペットの上に落ちた。彼は立ち上がって拾い上げた。それは履歴書だった。「林澤明美...」

昨夜の女が置いていったものか?

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