第15章

会社に戻る道中、江崎玲子は体を小さく縮めて、存在感を最小限にしながら車の端に座っていた。

どうせ酔っ払って記憶が飛んでいるのだから、古江直樹が追及してこなければ、彼女も知らないふりをするつもりだった。

会社に着くと、古江直樹はそのまま社長室へ向かい、長島健が重要な報告をするため同行した。江崎玲子はその隙に秘書課へと逃げ帰った。

「江崎、髪型変えたの?」リンダは驚いた様子で言った。「すごく似合ってるね。あなたの顔型には前髪より、そのスタイルの方がずっと良いわよ」

「ありがとう」江崎玲子は少し照れくさそうに答えた。

今日は江崎玲子が社長室に行く必要はなく、古江直樹からも呼び出しはなかっ...

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