第19章

風間健一は言葉を最後まで言い終えることができなかった。江崎玲子が彼に挨拶をして、早く帰るように言い、運転手の中村と一緒に車に乗って行ってしまったのだ。

山を上るのはたった十数分のことだった。

……

林澤明美は腹を立てて戻ってきた。彼女は使用人に当たり散らした後、古江直樹が戻ってきたと聞くと、急いでセクシーながらも清楚な寝巻きに着替え、香水をつけた。

古江直樹が書斎にいることを知り、林澤明美はわざと果物を洗い、書斎へ持っていった。

「古江さん」林澤明美は顔を赤らめ、ドキドキしながら入っていき、柔らかい声で言った。「果物を洗ってきましたわ。少し食べてください、あまり無理なさらないで」

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