第23章

江崎玲子は長い間干し吐きを続けていたが、何も吐き出せなかった。缶詰の匂いを嗅ぐと、また気分が悪くなった。

「リンダさん、すみません」江崎玲子は恥ずかしそうに言った。同僚からもらったものを目の前で吐くなんて、相手の顔に泥を塗るようなものだ。

リンダは古江直樹のそばにいるベテランだ。もし彼女を怒らせたら、ちょっとした嫌がらせをされるだけでも大変なことになる。

「江崎、この匂いが苦手なの?」リンダは怒った様子もなく尋ねた。「それとも、どこか具合が悪いの?」

江崎玲子は鼻を押さえながら答えた。「わたしもなぜかわからないんです。最近、時々吐き気がして、いろんな匂いに敏感になって...」

「江...

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