第25章

江崎玲子が病院を出るとき、手には医師から処方された葉酸と検査結果が握られていた。

彼女は妊娠していた。古江直樹の子どもを身ごもっていた。

江崎玲子は途方に暮れた。二十五歳で、シングルマザーになるのだろうか?

本当に自分にできるのだろうか?

江崎玲子はお腹に手を当て、ここに赤ちゃんがいると思うと、全身に力がみなぎるのを感じた。

彼女は孤児で、父も母も親族もいない。今、この赤ちゃんこそが世界で一番近い存在だった。

もう一人ぼっちではない。

古江直樹については...江崎玲子は彼にこのことを伝えるつもりはなかった。

古江直樹は金目当てだと思うかもしれない。そうなれば仕事も失い、何で赤...

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