第27章

江崎玲子は少しだけエレベーターの中に入り、この小さな動きも古江直樹の目に留まっていた。

古江直樹の側にいる長島健が笑顔で挨拶した。「江崎さん、おはようございます」

「古江社長、おはようございます」江崎玲子は依然として頭を下げたまま続けた。「長島さん、おはようございます」

エレベーターのドアが閉まると、江崎玲子はできるだけ存在感を消して、心の中で愚痴った。古江直樹はなぜ社長専用エレベーターに乗らないで、従業員と一緒に詰め込まれるエレベーターに乗っているのだろう?

エレベーターが12階に到着すると、多くの同僚がエレベーターの前に立っていたが、古江直樹が中にいるのを見て、誰一人として入ろう...

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