第31章

この女、口から出るのは嘘ばかりで、どれが本当でどれが嘘なのか分からない。

古江直樹はそのまま江崎玲子を見つめていた。江崎玲子は空気を読んで彼の方へ歩み寄った。「古江社長」

「江崎秘書は女性が好きなのか?」古江直樹は無表情で、喜怒を判別できなかった。「前回は婚約者がいると言っていたはずだが?」

「……」

今さら男女両方いけますなんて言えるだろうか?

そんなこと言ったら古江直樹がどんな目で彼女を見るか分からない。

風間健一をずっと盾にするわけにもいかない。嘘はいつか暴かれるものだ。

江崎玲子は正直に言った。「実は、婚約者なんていません。前に会社の下にいた人は友達で、一緒に孤児院で育...

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